鮭は河川に生まれ、外洋で長旅を続けながら成長し、産卵のために生まれ故郷の河川に戻って来るといわれています。
こうしたサケの詳しい生活史は、あまり知られていません。
産卵期に達したサケは、外洋での長旅を終え、生まれ故郷の河川を遡上します。
それまで群れをなして生活していたサケは、遡上を終えると雄と雌で1組のつがいを形成し、川底の砂利に、産卵床と呼ばれる「愛の巣」を雌が作り始めます。
この産卵床の中に、雌は数回に分けて卵を産み落とし(放卵)、雄が卵の上で精子を放出することで(放精)、「愛の結晶」である受精卵が形成されるのです。
サケは、一度でも放精/放卵すると、「自分の役割は終わった」と息絶えます...
そしてよみがえった命はふたたび河を下り、大洋に出て4〜5年後にまた自分の母なる河を目指すのです。
淡水、海水、淡水と、一生の間に何度も生活の場を変える鮭...
一体どれだけのエネルギーが秘められているのでしょうか?
そのダイナミックな一生は、母川回帰、一回繁殖というロマンチックなトピックとともに、私たちを魅了してやみません。
日本でも北海道をはじめとして多くの河川で鮭が遡上しますが、今まで、日本の河川のサケは漁業組合が管理しており、一般の人の釣りは禁止されていました。もし釣ったなら、それは密漁でした…
ところが近年、いくつかの河川で研究目的の調査で、釣った魚やその漁法の報告を条件に参加し、有料で鮭釣りが出来るようになっています。
福島県 楢葉町を流れる木戸川では、毎年「木戸川サケ有効利用調査」を行っており、一日の人数を限定して調査採捕従事者として参加をさせています。
木戸川は、毎年10万匹の鮭の遡上する日本でも有数の河川です。
この木戸川のサーモン釣りの抽選に当選し、11月のある日、家内と二人で参加してきました。
サーモン釣りは世界では多く行われており、イギリスや北欧、アラスカ、カナダなどが有名です。
小説家で、釣り師でもある開高健 氏が書いた「フィッシュ・オン」でアラスカのナクネク川でのキングサーモン釣りを読み、更に「河は眠らない」という映像で豪快なアラスカ・キーナイ川のサーモン釣りを見て感動し、いつかこのサーモン釣りをしたいという夢をもっていました。
開高さんは、アラスカの自然の中に入って釣りと思索の日々を送りながら、かずかずの珠玉の言葉を残してくれています。
その中に“ナースログ”という言葉がでてきます。
「森を歩いているとよくわかるんですけれども、斧が入ったことがない人が入ったことがない森、というのがそこらじゅうにいっぱいある。 それで、土が露出していないで、シダやらなんかに覆われていますが、草とも苔ともつかないもので森の床全部が覆われている。それから風倒木が倒れて、たおれっぱなしになっている・・・ これが、実は無駄なように見えて実に貴重な資源なのであって、風倒木がたおれっぱなしになっていると、そこに苔が生える、微生物が繁殖するバクテリアが繁殖する、土を豊かにする、小虫がやってくる。 その小虫を捕まえるためにネズミやなんかがやってくる、そのネズミを食べるためにまたワシやなんかの鳥もやってくる、森にお湿りを与える、乾かない。 そのことが河を豊かにする、ともう全てがつながりあっている。 だから、あの風倒木のことを、森を看護しているんだ、看護婦の役割をしているんだ、 というので“ナースログ(nurse-log)”というんですけれども、自然に無駄なものは何もない、 というひとつの例なんです。
だから、そうすると、人間にとっての“ナースログ”とは何でしょうか? 無駄なように見えるけれども実は大変に貴重なもの、というものも人間にはたくさんあるんじゃないか? それぞれの人にとってのナースログ、とは何か? 無駄をおそれてはいけないし、無駄を軽蔑してはいけない。何が無駄で何が無駄でないかはわからないんだ。
ここがひとつの目の付け所ですね、これは大事なことですよ。無駄なことしてると思うことはないんであって、いつかどこかでまた別のかたちで甦っているのかもしれないんだ。」
(開高健 著『河は眠らない』より抜粋)

自分にとってのナースログとは何か?
無駄なように見えるけれども実は大変に貴重なもの。
アラスカまでは行けないけれど念願のサーモン釣りが出来た事も、私にとってのひとつの貴重なナースログであると思います。
朝6時に現地に到着。海から朝日が昇り、キラキラと川面を照らしています。
念願のサーモン釣にフライフィッシング(毛鉤釣り)で挑戦しました。

英国での伝統的なサーモン釣りはフライフィッシングで、独特の「サーモンフライ(鮭釣り専用の毛針)」が用いられます。
芸術品とも思える美しいフライで鮭を釣る…サーモンに対する畏敬の念が感じられます。

それらをお手本にして想像をめぐらし、30本程のフライ(毛鉤)を巻いて行きました。
...が、しかし案に相違して川には全く鮭の姿がありません。
漁協の方の話によると、温暖化の影響か?今年は遡上が非常に少なく例年の1/4程度との事。
そこで普段は釣りの出来ない上流側のエリアを一部解放していただきました。
そこには数日前に遡上したとみられる鮭が瀬の強い流れを力強く上って行く姿が見られました。
所々で鮭が背びれを出して勢いよく泳ぐ姿が見えます。
その上流に向かってフライを投げ込み、鮭の口元にフライが届くよう流していきます。
一投一投に緊張感が走ります。
30分程して家内の釣竿が突然大きくしなり、鮭がかかりました。
鮭が走り、リールが逆転音を響かせます。
初めての手応えに竿を支えるのが精一杯という感じで必死の思いです。
寄せたり走られたりを何度か繰り返してやっと取り込みに成功しました。
65cm・2Kgと少し小振りでしたが綺麗な魚体の雌でした。
午前はそこまで。
昼は漁協のおかあさん達手作りのお弁当とお味噌汁をいただきました。
おだやかに晴れた河原でランチ。午後の釣りに備えます...
午後、スタートといきなり家内にヒット!竿が大きくしなりかなりの大物の様子。
さんざん走られてやりとりをするも糸を切られてしまいます。
その後も家内にたてつづけにヒットしますが、女性の力では鮭の堅い口への針がかりが甘いのか半転されてバレたり、切られたりでなかなか釣り上げられませんでした。
その後やっと私の竿にかかりました。大物の手応えに竿を支えリールを巻きにかかりますが、少し寄せたかと思うとグングンと頭を振ってまた大きく走られます。
一気に下流に走られて一緒になって川の中を追いかけます。時間が経つのも忘れるほど夢中になった駆け引きが十数分...
やがて姿を現したのは、82cm、4.5kgの立派な雄でした。
とても綺麗な魚体に感激しました。


その後は当たりも遠のき午後2時に終了しました。
風も無く、穏やかなお天気に恵まれて素晴らしいサーモン達と出会えた事に感謝します。
釣った鮭は漁協の方が回収し、孵化事業に供されるとのこと。
おみやげに雄の鮭を2尾ずついただき大満足のサーモン釣りの一日でした。
家に帰って早速鮭をさばき、贅沢に筒切りにしてサーモンステーキにしました。
今日の思い出を振り返りつつ、ワインを開け乾杯しました。
来年も、ぜひ挑戦したいと思える貴重な“ナースログ”体験でした。
今回おみやげにいただいた鮭で作った「サーモンステーキ」のレシピをご紹介します。

●「サーモンステーキ」
材料:生鮭2切、レモン1/2個、EVオリーブオイル、ペッシェスパイス(※)、塩、粒マスタード、マヨネーズ、白ワイン、ケーパー。
作り方:ソースを作る。EVオリーブオイル大匙1、マヨネーズ大匙1、レモン汁小匙1、粒マスタード小匙1/2を混ぜ合わせ冷やしておく。
生鮭の両面に塩をふり、上面にペッシェスパイス(※)をふりまぶす。
ジャガイモは串切りして油で揚げる。ほうれん草は軽くソテーする。
フライパンにオリーブオイルを敷き、鮭を並べソテーする。
表面をしっかりと焼き、裏返して白ワイン1/2カップを振り入れ蓋をして蒸し焼きにする。
水分を飛ばし十分焼いて皿に盛りつける。
じゃがいも、ほうれん草を添えてケーパーをのせてソースをかける。
※「ペッシェスパイス」は、あるととても便利なスパイスです。
魚や鶏肉に一振りするだけで格段に味と香りがおいしく変わります。
ドレッシングやマヨネーズに入れても、サラダやパスタにあえてもgoodです。
ぜひお試しください。








































